生前贈与の非課税制度にを分かりやすく解説

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夏休みに生前贈与について考えてみませんか?

 もうすぐお盆休みという方も多くいらっしゃると思いますが、ご予定はお決まりでしょうか?

 気にはなっているが考える暇がない、お金の話は触れにくい、と普段はなかなか生前贈与について考えたり、話し合う機会も少ないと思いますが、今回、多くの方に関係するような制度をご紹介しますので「何か使えるものはないかな~」という気持ちでご一読ください。

生前贈与とは

生前贈与とは、生きている間に次の世代へ財産を移すことで、相続財産を減らすための贈与方法です。贈与税は、一人が1年間に贈与を受けた財産に対してかかる税金のことをいいます。

生前贈与を行う目的・メリット

  1. 生前贈与をすると、贈与した人の財産は減ることになります。
    そのため、財産が減れば、亡くなった時の相続税が下がりいわゆる相続税対策になります。
  2. 生前贈与は、贈与する人が誰に贈るかを自由に選ぶことができます。
    一方、財産を生前に贈与しない場合は、死後に法定相続人の間で分割して相続されることになります。
  3. 生前贈与は、贈与する相手だけでなく贈与する時期も自由に選ぶことができます。
    相続の場合は、財産を持っている人が亡くなるまでは、子どもや孫は財産を受け取ることができません。

 この様に実際に必要な金額を、必要なタイミングで家族に贈与することができるメリットが生前贈与にはあります。しかし、生前贈与を行うと贈与税の申告を行う必要があり、贈与税は相続税より税率が高く、相続税の基礎控除額等を勘案すると大抵の場合、相続をするよりも税金を多く納めなければならなくなる場合がほとんどです。

ここで、祖父母や父母などから、20歳以上の子・孫へ贈与した場合の税率をご紹介します。

【特例贈与財産用】(特例税率)

 この速算表は、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算に使用します。

 例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します。

(例) 贈与財産の価額が500万円の場合

基礎控除後の課税価格 500万円 - 110万円 = 390万円

贈与税額の計算 390万円 × 15% - 10万円 = 48.5万円

そこで、知っておきたいの生前贈与に適用される控除や非課税制度です。

以下、利用出来る方が多いものをご紹介いたします。

生前贈与に適用される控除や特例のご紹介


暦年贈与

 贈与税の基礎控除は110万円です。一人当たり1年間で110万円までの贈与には、相続税は課税されません。相続税対策の王道ともいえる相続税対策で、長期間にわたって暦年贈与を計画的に行うことで、大きな節税効果が期待できます。

 しかしこの贈与が「定期贈与」とみなされてしまうと、贈与税がかかってしまうことがありますので注意が必要です。また、贈与をする際には「贈与をした」事実の証明が大切となりますので後でトラブルにならない様、暦年贈与を行う際は対策が必要です。

住宅取得等資金の贈与税非課税の制度


 平成27年1月1日から令和3年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属から、居住の用の住宅の新築、購入又は増改築等に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)をもらった場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。

イ 下記ロ以外の場合

ロ 住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合イ 下記ロ以外の場合

教育資金の贈与税非課税の制度

 平成25年4月1日から令和5年3月31日までの間に、30歳未満の受贈者が教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属の贈与者(父母や祖父母など。)から❶信託受益権を取得した場合、❷書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合又は❸書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合には、その信託受益権又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより、受贈者の贈与税が非課税となります。

夫婦の間で居住用の不動産の贈与に対する配偶者控除

 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例があります。

この特例を使うには贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであることが必要です。

最後に

 生前贈与の利用にあたっては要件が複数あるため、複雑で分かりにくいと感じるかもしれません。また、数年毎に制度も変更され注意が必要です。しかし、相続税対策はもちろん、受贈者にとっては将来の財産設計等にも利用できる制度です。この機会に一度対策等を検討されてはいかがでしょうか。


担当:鈴木 晴子

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